―私に役割があるとすれば、インストに興味を持ってない人たちにインストの楽しさを伝えること・・・
ADAM at
FUJI ROCK FESTIVAL2019の出演や、ウェブサイト「LiveFans」でベスト・アクト第2位に選出、前作アルバム「トワイライトシンドローム」が第12回CDショップ大賞ジャズ賞を受賞。と、その勢いを留めることなく活動する大注目のピアノ・インスト・シーンのトップランナー ADAM at(アダムアット)。
2020年5月27日に、最新フル・アルバムとなる「零(読み:ゼロ)」をリリース。自らを”詞がないアーティスト”と紹介し、音楽はもちろんユーモアあふれる人柄も魅力的なADAM atに最新作についてお話を伺いました。
「ここ数年、前作のツアー中に次のアルバムの曲作りをし、ツアーが終わったらレコーディングをする、そんなスケジュールで1年間を過ごさせて頂いておりました。今作も同様でしたが、前作のツアーが終わった12月21日の時点でアルバム収録曲が揃っておらず・・・。既に決まっているスケジュールを変更するわけにもいきませんし、とにかくレコーディング開始までに曲を作らなければと、過去一番に追い込まれていたと思います。」
と制作時期を振り返るADAM at。そんな中意識されたこととは?
「追い込まれた中で作り出した楽曲は、“作ったことで満足してしまう”という現象に陥りやすい為、何度も何度も作り直し、聴き直し、練り直し…。時間は限られていましたが、そんな時に陥りやすい現象に気をつけようと意識した結果、バリエーションに富んだアルバムになったような気がします。そもそも、もっと前から余裕を持って曲を作っておけばそんなに追い込まれることもなかったのですが。典型的な自業自得ですね。」
そうして出来上がったアルバム『零』はおっしゃる通りバラエティーに富んだ1枚に。特に思い入れの深い楽曲はありますか?
「これまで“こんな曲を作ろう”と意識して曲を作ったことはほとんどなかったのですが、今回は自分の開催するフェス「INST-ALLフェス」で出演者と観客のみんなで演奏する曲を作りたい、と意識し作ったのが「Dancer In The Lake」です。フェス当日に出演バンドのホーン隊が勢ぞろいし、お客さんみんなで歌う、そんなイメージを元に作りました。」
「Dancer In The Lake」のMVではその「INST-ALLフェス」の裏側映像も公開していますね。
「インストという、世間にとってはポピュラーミュージックにならないジャンルにおりますので、それを多くの人に知ってもらうために始めたのが「INST-ALLフェス」です。インストは皆が目にするチャートにも入りにくいし、歌番組にも出ない、カラオケにも入らないので多くの方に知ってもらいにくいジャンルです。まだまだ、ややマニアックなジャンルを好きな人たちが集まる娯楽でしかありませんが、インストというジャンルと地元・浜松という地名をたくさんの方に知ってもらえたらいいなと思っています。」
他にも絶望感と喪失感を突き詰めたという5曲目「幻想陰翳ディストピア」や、日本の妖怪たちのクリスマスイブを想像して作った9曲目「道成JINGLE鐘ガ鳴ル」など、独創的な世界観から生み出される楽曲たちが印象的。その想像力はどこから?
「人間、誰しも想像力は非常に豊かなんだと私は思っております。昔の人は今のように娯楽がたくさんあったわけではないので、あの山が人に似ている、あの星の並びは何かに似ている、と想像を巡らせ、現代にも残る伝説や物語を作ってきました。同様に私も独創的でも想像力豊かでもなんでもなく、多分、考え想像する時間が人様よりもちょっと多いだけだと思います。浜松から各地にライブで向かう道中、5年で20万キロほどの車移動をしておりますので、その移動時間が専ら想像する時間となっています。」
また、今作の特徴でもあるのが豪華ゲスト陣。様々なコラボやエッセンスを加え、新しいピアノ・インスト・シーンにどんどん切り込んでいく―。
「私は以前、コンサート会社に入社していたので、その時裏方として見ていたアーティストとまさか自分の曲を一緒に演奏する機会が来るとは思いもしませんでした。特にアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の伊地知潔さんとは、レコーディングだけでなく料理イベントを一緒にやらせて頂いたり。静岡市民文化会館中ホールでアジカンがライブをしていた時に、“バイトくん”と呼ばれながら機材を運んでいた自分にとっては、今の出来事が不思議でしかありません。」
7曲目「サタデーナイトフルット」ではボーカルとしてSCOOBIE DOのコヤマシュウが参加。ついに“詞がある“楽曲が生まれました。
「デモやレコーディング時点ではそんな予定はありませんでしたが、レコーディングを終えてラフミックスを聴いているうちに、“この曲にボーカルを入れたい”と思い、コヤマさんにお願いしました。基本こういったコラボではレコーディングが始まる前からお互いに練っていくものなのですが、かなり急なお願いにも関わらずコヤマさんは快諾してくださいまして、この曲が完成しました。」
▼SCOOBIE DO コヤマシュウからのコメントが到着!
「今回は自分にとっても今までないコラボレーションで楽しかった!ADAM atの美しい世界の中にどうやって入り込んでFunkするか?どうしよう??と3日間くらい悩んで(笑)取り組みました。ADAM atのライブ風景を想像し、玉田くんやメンバーの皆さんだったらこんな感じ好きかな〜、なんて色々考えて作ってみたので、今までにない違和感も込みで、玉田くんやファンの皆さんにも気に入ってもらえたら嬉しいです!ありがとう!」
SCOOBIE DO コヤマシュウ
こんなにも表情豊かで想像力を掻き立てるメロディを楽しませてくれるのだと、改めて気づかされるADAM at“詞のない”音楽。今後の目標は?
「世の中にはたくさんのインストバンドがいらっしゃる中、もし私に役割があるとすれば、“わかる人にだけわかる音楽”という精神を貫くのではなく、インストに興味を持ってない人たちにこのジャンルの楽しさを伝えることかなと思います。アートかホビーで分けたら、ホビーでいたい。色々なジャンルを取り入れたり、たくさんのことに挑戦したとしても、いつでもいつまでも気軽に、聴いてもらう人の生活に寄り添える音楽を作り続けたいですね。」
2020年10月には全国ツアー「零 Release Tour2020」の開催が決定。その意気込みは?
「今回はボーカルもトランペットも入ったアルバムになりましたので、それがどうなるのかを楽しみにして頂きたいのですが、今はとにかくツアーが開催できることを願っています。ツアーが開催でき、ライブ会場でお会いできたら、その時は今のこの鬱憤をみんなで晴らしたいですね。」
最後に、静岡県・浜松出身のADAM at。同じ東海エリアの名古屋の印象や、思い出深いエピソードがあれば教えてください。
「ラジオ収録のため、最低でも2週間に1回は必ず名古屋に行っていたここ数年。ですので名古屋は完全に第2のホームだと思っております。思い出がありすぎて書ききれないのですが、初めての名古屋でのライブをブッキングしてくれたキット君という方の話を。キット君はご自身でもベースを弾かれるので、その初ライブや、その縁で2014年にリリースした「Silent Hill」のレコーディングでもベースを弾いて頂きました。
そんな彼が『伏見JAMMIN’』という新しいライブハウスの店長になり、そして2015年からは「The Hey Song」というインストバンドを開始、2019年4月にメジャーデビュー、今年2020年5月13日に2枚目のミニアルバムをリリースしています。私の名古屋での思い出はキット君から始まっておりますし、現在もFM愛知で一緒に番組をやっております。ADAM at共々、キット君のThe Hey Songもよろしくお願い致します、という言葉で締めくくりたいと思います。」
実は話にあがったThe Hey SongもNAGOYA.(ナゴヤドット)での取材が決定。東海エリアからピアノ・インスト・シーンの更なる盛り上がりが期待できそうな予感です、、、!
ADAM at プロフィール
2011年静岡県浜松のライブハウスでインストゥルメンタル・セッション・バンドとして活動を開始。2015年メジャーデビューを果たし、数多の国内外のフェスに出演、CM音楽を手掛ける他、インストシーンの普及を図るべく、愛知アットFM「ジャミット」、静岡SBSラジオ「ADAM atの詞がないラジオ」のレギュラー番組を担当。2018年、2019年には自身主催で、インストバンドのみを集めた「INST-ALL FESTIVAL」を開催し話題を呼んだ。
【オフィシャルサイト】
【オフィシャルTwitter】
アカウント:@ADAMat1026
【オフィシャルfacebook】
https://m.facebook.com/adamat1026/
Album『零』(読み:ゼロ) 発売中!
テーマは“常にゼロから作り出すこと“。ADAM at最大の武器とも言うべき流麗で美メロな楽曲をはじめ、ハードコアでフロア映えするダンス・チューンなど幅広いジャンルの楽曲を11曲収録。
〈ビクターエンタテインメント〉
CD VICL-65384 2,500円(税別)