東日本大震災、福島第一原発の激動の5日間を描いた話題作。映画〈Fukushima50〉佐藤浩市/火野正平インタビュー

 

2011年3月11日午後2時46分。

皆さんはどこで何をしていましたか?

 

2019年3月6日、いよいよ全国ロードショーとなる映画『Fukushima50』は、9年前の東日本大震災、福島第一原発を襲った史上最大の危機から激動の5日間の様子を描いた真実の物語。原発内ではいったい何が起きていたのか、戦い続けた50人の作業員たちを中心に繰り広げられます。

 

渡辺謙や吉岡秀隆、緒形直人、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工、佐野史郎、安田成美ら、日本映画界を代表する実力派キャストが集結する中、福島第一原発1・2号機当直長 伊崎利夫を演じた、主演の佐藤浩市さん、中央制御室の作業員・大森久夫を演じた火野正平さんにインタビュー。

この映画に対する思いや、現場の雰囲気、また震災当時のこと、お話しを伺いました。

 

 

――今作は実話をもとにしているということで、どのような思いで役と向き合っていきましたか?

(佐藤浩市さん:以下・佐)この作品は、記録映画ではないし、いわゆる劇映画。けれど、フィクションかと言われるとフィクションではない。そうゆう意味では、これまであったようでなかった形態の映画だと思います。よりわかりやすく伝えるために、設定を多少変えてはいますが、この5日間に起こった出来事というのはほぼ事実に基づいています。きっとこの国の人たちは知らないことが多すぎて、この映画を見ると「なんで自分たちはこんなことを何も知らなかったんだろう」と感じると思います。その中で、あの場所にいた作業員たちは、1分1秒先もどうなるか分からないという状況で、それでもあの場所に残り続けたということを、どう見た方に伝えることができるだろうか、という思いが1番大きかったです。

 

 

――役作りも難しかったのでは?

佐)あの場所に残った人々の思いというのが、国の肩越しに家族が見えたのか、家族の肩越しに国が見えたのか、それは誰にもわからない。けれど僕自身もそうだし、この映画に参加したみんなもそうだと思うんだけど、途中からそこに意味はなくなっていきました。そこにいることによって何か出来るわけじゃないということは、彼らも十分わかってる。けれどただそこで計器の目盛りを見ることしかできなくても、何かが変わる可能性がある、だったらこの場に残ろうじゃないか。こう思えるメンタリティって、そこにいた当事者にしかわからない感情だと思うんです。

 

(火野正平さん:以下・火)きっと逃げ出したい人もいっぱいいただろうけれど、逃げられない。ならば戦おうと、まるで戦場の兵隊みたいだと感じていました。戦うなら若いものを残して俺が先にいってやろう、とか重なる部分があるなと。

 

 

――中央制御室のシーンというのは、劇中でも特に緊迫感に溢れていました。撮影中はどのような雰囲気でしたか?

火)中央制御室のシーンだけで撮影に3週間程度もかかりました。毎日あの場所にいて毎日同じ人間と顔をあわせると、だんだん顔も疲れてくるんです。それが結果的によかったのだと思います。あのセットの中にいる間は緊張感があって、休憩で表に出るとホッとしたのを覚えています。

 

佐)人それぞれ個人差はあったにしても、そこにいた人々が己のためではなく、国のため、家族・ふるさとのために現場に残っている。そうゆう思いを何日間もあのセットで演じているうちに、自分たちも肌で感じてきてね。たかが役者の烏合の衆でも、結束力が固まって、久々に、自分たちがチームなんだ、という感情を味わいました。

 

 

――豪華キャスト陣が集結した今作。実際の中央制御室の作業員たちのように世代もバラバラですが、その共演で感じたことは?

佐)僕らは何十年もそうゆう世界でやってきているけど、一般社会と違う点といえば、年が離れても上司と部下ではなく、同じフレームの中にいる一役者同士だということ。(火野)正平ちゃんとは一回り近くも年齢が違ってもちゃん付けで呼ぶし、(萩原)聖人だって全然年下だけど結構なめた口を聞く(笑)。ただ、多少形は違うけれど、お互いを思う気持ちというか関係性というのは共有できる部分があったのではないかと思います。

 

 

――佐藤さんは当直長として、リーダーという役柄でもありました。みんなの結束力を高めるためにされたことはありますか?

佐)クランクインの前に中央制御室のメンバーに呑みに行こうと声をかけたら、みんな参加してくれて、酒を呑みながら、俄かではあるけれど、それぞれが勉強したことを話したり、そうゆう時間は設けました。

 

――今作を見ることは、誰もが当時を振り返るきっかけになるのではないかと思います。お二人は、あの日どこにいて、何を感じていましたか?

佐)それはもう、この映画に携わっていた者たちの中で合言葉のように会話されていました。「あの日何をしていたか?」って。僕は東京で撮影をしていて、帰り際近くのコンビニであの時間に遭遇しました。

 

火)俺は日本海側にいました。鳥取県あたりだったので、あまり揺れは感じなかったけれど、後からありゃーえらいことになってるって思ってね。すごいことになっちまったなって思ったことを覚えています。まさか後にそれを題材とした映画に携わることになるとは、思ってもみなかった。

 

佐)これが欧米だったら、250㎞圏内という広範囲に緊急避難がすぐ出ていたといいます。それだけ大変危険な状況だったんですよね。

 

火)だからこそ、あの時にあの場所で何が行われていたのか、この作品を見て知ってほしい、と思うね。

 

 

――そういった意味でもこの「Fukushima50」という作品は世界からもは注目されています。この作品で感じてもらいたいこととは?

佐)「Fukushima50」というのは海外のメディアの方が呼んだ名前ですが、どうゆう意味合いを込めて呼ばれたのかはわかりません。勇気・尊敬・驚嘆の意が込められているのか。原子力を前にして何かできるわけではないのに何故その場に残ったのか、ということかもしれない。最後なぜ爆発せずに事態は収束に向かったのか、今もなお分かっていないけれど、これまでは、あの5日間に何が行われていたのかすら分かっていなかった。今作ではその部分が初めて詳細に描かれる、そこがこの作品の話題性の大きさの理由だと思います。

 

火)まだこの被害が完全に終わったわけではないからね。

 

佐)映画にするには早すぎたのか、それとも逆に今がギリギリだったのか、わからない。結論が出ることではないにしろ、まず何があったのか知った上で、これからをどう対応をするのか。この映画が、もう1回考えてみよう思い出してみよう、と思うきっかけになればと思います。

 

 

あれだけニュースでやっていた出来事ですが、その詳細やどのように収束されたのか、ご存知の方はどれだけいるでしょうか。命をかけて家族を仲間を福島を、そして日本を守るべく奮闘された作業員の方たちの魂が詰まった、片時も目が離せない作品となっています。日本人はこの真実を忘れてはいけない。ぜひ皆さんも劇場にてご覧ください!

NAGOYA. ライター

 

■STORY

マグニチュード9.0、最大震度7という巨大地震が起こした想定外の大津波が、福島第一原子力発電所(イチエフ)を襲う。浸水により全電源を喪失したイチエフは、原子炉を冷やせない状況に陥った。このままではメルトダウンにより想像を絶する被害をもたらす。1・2号機当直長の伊崎ら現場作業員は、原発内に残り原子炉の制御に奔走する。全体指揮を執る吉田所長は部下たちを鼓舞しながらも、状況を把握しきれていない本店や官邸からの指示に怒りをあらわにする。しかし、現場の奮闘もむなしく事態は悪化の一途をたどり、近隣の人々は避難を余儀なくされてしまう。
官邸は、最悪の場合、被害範囲は東京を含む半径250㎞、その対象人口は約5,000万人にのぼると試算。それは東日本の壊滅を意味していた。
残された方法は“ベント”。いまだ世界で実施されたことのないこの手段は、作業員たちが体一つで原子炉内に突入し行う手作業。外部と遮断され何の情報もない中、ついに作戦は始まった。皆、避難所に残した家族を心配しながら―

 

3月6日(金)全国ロードショー

映画『Fukushima50』

【出演】

佐藤浩市 渡辺謙

吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人

堀部圭亮 小倉久寛 和田正人 石井正則 三浦誠己 堀井新太 金井勇太 増田修一郎 須田邦裕

皆川猿時 前川泰之 Daniel Kahl 小野了 金山一彦 天野義久 金田明夫 小市慢太郎 伊藤正之 阿南健治

中村ゆり 田口トモロヲ 篠井英介 ダンカン 泉谷しげる 津嘉山正種 段田安則

吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美

【監督】

若松節朗

 

 

PAGE TOP