2020年11月14日(土)、名古屋の『ミッドランドスクエア シネマ』にて映画「十二単衣を着た悪魔」の舞台挨拶が開催されました。登壇されたのは、「嫌な女」(’16)以来4年ぶり、長編2作目となる黒木瞳監督。そしてブレずに信念を貫くカリスマ的なキャラクターの弘徽殿女御を体現した女優の三吉彩花さんです。
原作は、脚本家・小説家の内館牧子による「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬舎文庫)。現代のフリーターが突然「源氏物語」の世界に異世界トリップ!これまで悪女の代名詞的ともされた“弘徽殿女御”を最強のヒロインに仕立て、現代ネガティブ男子を次第に成長させていく――。という斬新で新感覚の時代劇エンターテインメントが誕生しました!
―黒木瞳監督は、原作のみならず「源氏物語」についても勉強するため、名古屋の『徳川美術館』も訪れられたとか、、、。
「そうなんです。国宝である〈源氏物語絵巻〉を展示する特別展が徳川美術館で行われていることを聞き、名古屋に参りました。ずっと絵巻を見ているうちに、『あっ!主人公の伊藤雷は絵巻の中にトリップすればいいんだ!絵巻みたいに撮影したらいいのでは!?』って閃いたんです。さらに、展示場の入り口に飾られた、布で作られた絵巻風の装飾があんまり立派だったので、『映画で使ってもいいですか?』ってお尋ねしました。そうしたら快く承諾していただけまして、映画の冒頭に出てくる絵巻は、徳川美術館からお借りしたものなんです。しかもタイムリーなことに、徳川美術館で今まさに企画展「読み継がれた源氏物語」というのが12月13日(日)まで開催してるんですって!もう、この映画を観る前、観た後に楽しめること間違いなし。映画と展示で2倍楽しめるはずです。」(黒木監督)
―注目したいのは、タイムトリップした舞台となる平安時代の世界。タイトルにもなっている“十二単衣”についてのこだわりは?
「十二単衣に関しては、京都にも勉強に行きましたし、専門の先生方に勉強会を開いていただきながら造詣を深めていきました。でも、どの先生方も、その時代の本物を見ている訳ではないので、最終的には『あなたの好きなようになさい!』と背中を押してくださったんです。その言葉がとても励みになりました。十二単衣に関しては諸説ありまして、十二枚でなくてもいいみたいです。防寒のために十二枚重ねたとか、高貴な方が亡くなれれた時に十二枚着ていらしたとか、そのうちにこういった扮装のことを十二単衣と呼ぶようになったそうです。私は、弘徽殿女御には十二枚を絶対に着せたいと思いまして、その着物掛けから、色合わせまでとてもこだわりました」(黒木監督)
―実際に十二単衣を着られた三吉さん、いかがでしたか?
「重かったです。。。(笑)ですが衣装の方々にとても気を配っていただきまして、衣装合わせの時は一枚一枚を重ねたり脱いだりしながら決めたのですが、撮影の時は十二枚を縫っていただいて、1回で全部を着れるようにしていただきました。弘徽殿女御が年齢を重ねるごとに羽織りの色も変わりますし、中の色も微妙に変わっていくので、十二単衣の移り変わりも楽しんでいただけたらなと思います」(三吉さん)
―演技する上で大変なことはありましたか?
「十二単衣にプラスして、この長い髪の鬘(かつら)をつけているので重かったです。モデルの活動をしている時は背筋を伸ばしてポージングしますが、重みでさらに後ろに反ってしまい、すごくインナーマッスルを使いながら演技していました。いいトレーニングにはなったと思います(笑)」(三吉さん)
―三吉さんの演技について監督はいかがでしたか?
「弘徽殿女御は、悪魔と呼ばれるような強い女性なんですが、内面では色々な葛藤があったと思います。悩んだり、迷ったり、泣いたり、悲しんだり、いろんなことが渦巻いているからこそ強く立っていようという志が生まれたと思うんです。三吉さんが演じた弘徽殿女御は、強さだけではなく内面も表現してくださったので本当に素晴らしい弘徽殿女御“様”になったと思います」(黒木監督)
―演じる上でポイントにしたこととは?
「色々な作品で、色々な役に向き合います。脚本を読んで自分なりにキャラクターを想像したりして、役にアプローチしていくのが常なんですが、今回は撮影前からワンツーマンで弘徽殿女御を演じるにあたっての基礎を、黒木監督から指導していただきました。2人でコツコツと地道にお稽古していきました。その作業をするうちに、自分の中の弘徽殿女御が出来上がっていきました。スクリーンで完成した作品を観た時、とても安心できました」(三吉さん)
「最初は口真似から練習をしてきましたが、最後には殻を破って、三吉彩花オリジナルの弘徽殿女御を作り上げることが出来ていたので、素晴らしいと思いましたし、頼もしく見守っておりました」(黒木監督)
―世界観に合わせて見どころの一つとなるのが、弘徽殿女御の名台詞の数々。「カワイイ女はバカでもなれる。しかし怖い女になるには能力がいる」など、彼女の歯切れの良いセリフの数々は〈弘徽殿語録〉としてまとめたいほどです。
「今回の撮影は時系列にほぼ順撮りしてます。弘徽殿女御が若い頃に発したセリフの説得力と、年齢を重ね、色々なことを犠牲にした後に発するセリフの説得力の違いを楽しんでいただけたらなと思います。演じている時には分からなかったのですが、完成した作品を観た時に自分が一番びっくりした部分でもあります。説得力とか、熱さとか、凄みが全然違っていて、弘徽殿女御を演じることで、自分もいっしょに成長させてもらったなという実感がありました」(三吉さん)
―お二人の身近で弘徽殿女御のように、品があり素敵だなと思われる方はいらっしゃいますか?
「私は内館さんの原作を読んだ時に、弘徽殿女御のことを、こうゆう人に私もなりたい、こうゆう大人になりたいと強く思ったんです。自分の立場や年齢を受け入れて、それが人としての品性なんだと言ってのける弘徽殿女御がほんとに理想の女性だなと思いました。そうゆう女性に憧れたということが、この映画を撮りたいと思ったきっかけでもありますね。」(黒木監督)
「私はこの作品が決まってから、撮影をして、公開されて、今日の今日までずっと、まさに黒木瞳監督が弘徽殿女御のような方だろうと思っていました。監督自身『あと30年若かったら弘徽殿女御をやりたかったわ』とおっしゃっていましたが、弘徽殿女御のセリフを『こう言ってみて』と指示くださる際のナチュラルなセリフが、もう弘徽殿女御が言っているように聞こえていました。いつも指の先まで美しく品のある方なのですが、撮影中には懐が深くてかっこいい一面もあって、ほんとに素晴らしいなと思っています。」(三吉さん)
―最後にこれから映画を観る方へメッセージをお願いします。
「とても清々しい気持ちに浸れる映画だと思いますし、最後にはとても温かな気持ちになれる映画です。この映画はキャストもスタッフが一丸となって作り上げた映画です。ぜひ、お楽しみください」(三吉さん)
「源氏物語というと、むずかしいと思われる方もいるかもしれませんが、この作品は内館牧子さんが源氏物語の中では脇役扱いの弘徽殿女御をヒール役として据え、弘徽殿女御を中心に広がる裏源氏物語なんです。源氏物語の見方を変えると楽しみ方も変わると思います。あと、出演者の笹野高史さんが映画の中であることをしますが、これはアドリブです。どうぞいっぱい笑ってください!冒頭でお笑いコンビ「EXIT」の兼近大樹さんが滑舌の悪い役で登場します。登場人物の名前を印象付けたいと思い、私がこういうキャラクターを作りました。ものすごく練習して挑んでくださいました。是非注目してください!」(黒木監督)
映画『十二単衣を着た悪魔』絶賛公開中!
就職試験を立て続けに落ちているフリーターの雷(らい)は、京大に合格した弟に対して卑屈になっていた。そんな折、「源氏物語」の世界を模したイベント設営のアルバイトからの帰宅中、激しい雷雨に見舞われ気を失う。目が覚めた時、そこは1000年以上も昔に紫式部によって書かれた「源氏物語」の世界だった!!スマホもネットもない世界で、息子を帝にしようと野心に燃える弘徽殿女御に翻弄されながらも、自分の境遇と重なり次第に触発されていく・・・。
【原作】
内館牧子「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬舎)
【監督】
黒木瞳
【出演】
伊藤健太郎、三吉彩花
伊藤沙織 田中偉登 沖門和玖
戸田菜穂 細田佳央太
ラサール石井 伊勢谷友介
山村紅葉、笹野高史
【制作・配給】
キノフィルムズ
©2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー
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