【愛知県・奥三河】心を清らかに浄化する、山里の“奥”の秘境をめぐる旅路へ

木村しのぶ

木村しのぶ

2022.08.08

 

眩しい緑に澄み渡った空気。密を回避して、大自然に抱かれ思いっきりリフレッシュしたい! そんなときにおすすめなのが、大瀑布や美しい渓谷など、山里の秘境をめぐる旅。

 

最近、旅のスポットとして注目されているのが全国各地に点在する“奥”エリア。東海エリアでも奥伊勢や奥飛騨など、“奥”が付く地には、まだ知られざる秘境が詰まっています。愛知にも、そんな魅力があふれる「奥三河」があります。

 

絶景、歴史、秘湯…、知られざる名所・手つかずの景勝地を訪れて、心が清らかに浄化されるひとときを体感してみませんか?

 

 

1000年以上の時が創り出した、清流と渓谷美が織りなす自然のアート

 

名古屋から車で1~2時間で辿り着く「奥三河」。三河の北東部・内陸に位置する深山幽谷の絶景の宝庫です。

 

 

そんな奥三河の山間部・標高700mから1000mの山が連なり、町域の約93%が山林で占められている東栄町は、天竜川水系の大鈴山に源をもつ大千瀬川と振草川が流れる、今もなお日本の原風景が残るエリア。

 

この地区には、差別侵食によって形成された大滝「蔦の渕 」をはじめ、約1500万年前に活動した火山の痕跡でもある柱状節理が見られる「釜淵」、県の天然記念物に指定されているポットホール「煮え渕」など、ユニークな地形観察スポットが点在。

 

 

写真は対岸の歩道より、渕の近くまで降りて撮影をした景観。歩道は傾斜があるので、足元に注意をして訪れよう。蔦の渕(つたのふち)住所:愛知県北設楽郡東栄町大字下田付近

 

まずは、”奥三河のナイアガラ”とも呼ばれる「蔦の渕 」へ。滝頭は柱状節理を示す堅い珪化安山岩(火成岩)、滝壷は軟らかい黒色泥岩で出来ており、泥岩は珪化安山岩より早く風化・侵食されて削り取られて滝壷となりました。

 

幅70m落差約10m、川幅一杯に流れ落ちる神秘的な大滝の景観には、“蔦の淵には竜神が住む”、“竜宮城へと繋がっている”という言い伝えも!

 

 

展望台には迫力満点の龍のチェンソーアートを展示。

 

全景を眺めたいなら、南岸付近に設けられた駐車場に車を停めて、歩道からの観賞を。また、日帰り天然温泉施設『とうえい温泉 花まつりの湯』裏手にある展望台からは、迫力ある滝の表情を間近に見ることができます。

 

 

県指定天然記念物のポットホールが見られる「煮え渕」。煮え渕(にえぶち)住所 愛知県北設楽郡東栄町西薗目

 

次に向かったのは、町の東側の西薗目地区にある「煮え渕」。ここで観ることができるポットホールは、愛知県の天然記念物にも指定されています。

 

激しい水の流れの中、直径約5m前後の穴がいくつも川の中央に連続している光景は、まさに自然が創り出した迫力満点の造形美!

 

現在、歩行者専用の赤い橋は老朽化により通行止めとなっていますが、橋の下から写真のような景観を眺めることが可能。見学に行く際には、環境を破壊したり駐車のマナー違反とならないよう、十分に注意して訪れることをおすすめします。

 

 

日本古来の信仰心に触れる、伝統的な神事芸能「花祭」

700年以上も受け継がれてきた、奥三河の伝統祭事。今後の花祭の開催状況は東栄町公式HPなどを確認。

 

奥三河を訪れたならぜひ触れておきたいのが、このエリアで大切に継承されてきた「花祭」。毎年11~1月にかけて開催され、子どもたちが愛らしく舞う「花の舞」、巨大な面の鬼が鉞をかざす「山見の鬼」「榊鬼」など、「テーホヘ、テホヘ」の掛け声とともに様々な舞が夜を徹して行われます。

 

祭の根本思想「生まれ清まり」を祈り、焚火を囲んで湯釜の湯をまき散らし、笛や太鼓による囃子に判れて乱舞するさまは真に壮観! 1976年には国の重要無形民俗文化財にも指定されました。

 

 

そんな「花祭」の臨場感を体感することができるのが、祭礼の保存・伝承を目的とし設立された『花祭会館』

 

 

等身大の鬼や衣装を着けた人形が備わり、花祭りの臨場感を伝える舞庭。

 

小さな外観からは想像がつかないほど、館内は奥行きがあり展示物も豊富。祭りで使用されたお面や衣裳、祭具、映像資料などが、時代別・地域別などでわかりやすく展示され、中には祭りの司祭者「花太夫」が神事実現のために書き記した、江戸時代の古文書などの貴重なものも。

 

 

 

舞の中央にある湯釜の上に飾られる、数多くの切紙細工による「切り草」。明治以降、神仏分離に伴い仏教色が排除された集落もあり、その形も地域により様々。

 

 

祭具作りの職人など、現在祭りに関わる人の声や表情も丁寧に紹介されており、この地に息づく日本人の信仰心、血の通った祈りや心の形をも伝わってきます。

 

 

鑑賞後は、ぜひ花祭の時期にこの地を訪れてみたい…そんな気持ちとなるはず!

 

 

周辺には民芸館・博物館があり、この地域の歴史と文化が分かるようになっている。花祭会館 愛知県北設楽郡東栄町大字本郷大森1  電話0536-76-1266 9:00~16:30 休 月曜

 

 

肉のうまみが凝縮!地元産若鶏メニューや日本一と称された鮎の料理。山里のご馳走をぜひ

 

 

東栄町を車で走っていると目に入ってくるのは街を流れる川の美しさ。大千瀬川の上流・振草川の川底は岩盤質が多く、太陽の光が底までよく届き透明度を引き立たせている。この環境ため良質な苔が育つことから、美味しい鮎が成長するのだそう。2017年「第20回清流めぐり利き鮎会」では、「味・香り・見た目すべてが素晴らしい」と振草川の鮎がグランプリを獲得した。

 

日本一の称号を手にした鮎をいただくべく訪れた『やま正』。創業から100年以上、魚の行商から始まり、定食屋、さらに料亭へと業態が大きくなりつつも、お昼の食事や夜の宴会にと地元民にこよなく愛され続けている老舗料理屋です。

 

 

ホッと心和むどこか懐かしい雰囲気の中、魚屋の目利きで厳選した鮮魚をはじめ、東栄町産若どり「錦爽鶏」のメニュー、四季折々の料理をいただくことができます。

 

 

~8月限定で登場する鮎料理は、その時々の成長に合わせた焼き加減により、香りや風味を最大限に引き出すというこだわりぶり。ひと口運ぶと繊細な旨味と上品な香りが広がり、得も言われぬ幸福な気持ちに。メニューは塩焼きの他に味噌田楽味も。

 

また、東栄町産「錦爽鶏」のから揚げは、肉の旨味をしっかりと閉じ込めた、驚きの柔らか食感で、リピーター続出中の人気メニュー。こちらも訪れたならぜひオーダーしたい逸品です。

 

 

通年を通しての人気メニューは、東栄町産若どり「錦爽鶏」の唐揚げやチキンカツ定食。「錦爽鶏」は肉質がやわらかくほどよい歯ごたえが特徴。鶏のから揚げ定食1,160円

脂身が少ないにもかかわらずジューシー。肉の旨味を強く感じることができる。

 

定食屋と個室を完備する料亭と二つの顔を持つ。その時々のシーンで使い分けできるのも魅力。やま正(やましょう) 愛知県北設楽郡東栄町本郷西万場4 0536-76-0140 11:00~14:00、17:00~20:30 休 月曜・日曜夜

 

 

愛知の奥座敷「湯谷温泉郷」で、心身ともにときほぐすひとときを

 

 

次に向かったのは東栄町の隣町・新城市。名瀑・渓谷など景勝地の宝庫でもあり、織田・徳川連合軍と武田軍が火花を散らした長篠・設楽原の戦いなど、戦国期の大舞台としても知られています。

 

 

 

新城市の観光地といえば、日本百名湯に選定されている湯谷温泉。温泉の歴史は古く、開湯は1300年前。宇連川沿いに旅館が立ち並び、渓谷を愛でながら湯あみができる、自然美と風情溢れる温泉郷。

 

 

今回は、湯谷一の広さを誇る露天風呂が自慢の宿『湯谷温泉 -湯の風HAZU-』で宿泊。露天風呂から望む緑、心地よい川のせせらぎ。満天の星々を眺めていると、心身ともに解きほぐれていくよう…。

 

 

翌日は、山全体が国の名勝・天然記念物に指定されている「鳳来寺山」へ。1425段の石段を登ってたどり着く「鳳来寺」は、1300年前に開山された古刹。徳川家光によって建立された仁王門など見所が満載です。

 

この辺りは紅葉の名所でもあり、11月下旬頃に険しい岩肌が黄金色や朱色に染まり、美しいグラデーションを見ることも。ぜひまたこの時期に訪れてみたい!

 

新城市にある国指定名勝・天然記念物「阿寺の七滝」も必見。

 

秘境、古湯、伝統芸能…、今回の旅で体験した手つかずの自然や日本の原風景は、忘れかけていた大切な何かを思い出させてくれるような、旅の余韻を心に色濃く残してくれました。

 

まだまだ未開の魅力が潜む愛知の“奥”に訪れて、心洗われるひとときをぜひ堪能してみてください!

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2022.08.08

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