静かで美しいふたりの日々を描いた映画「静かな雨」で、事故の後遺症があっても淡々とした強さを持つこよみという難しい役演じた衛藤美彩さん。映画初主演となった今回、試行錯誤をしながら役と向き合って作り上げた作品への思いについてインタビューしました。
※この記事は2月14日に発売された雑誌「CATCH&UP 名古屋大事典」のインタビュー記事と写真を流用して掲載しています。
原作と脚本を読んでからと、クランクインしてから終わってからと、“こよみ”という役が今も変化してるくらい違っていて。始めはこよみが「強い」というのは分かるんですけど、その強さはどこから来てるのかっていう、情報があまり書かれていないんですよね。そこを想像して埋める作業をクランクインから監督としました。
はじめ、こよみという役は結構冷たい印象が大きかったんですよ。私の方がお節介というか、頼まれてないのにやっちゃったりとか。一個一個のリアクションの対して、喜怒哀楽がちゃんとあるみたいな。そういうクールな人だと思って演じたんですけど、実際に映画が完成して、音楽がついて、釜山でも上映会をして、いろいろな感想を聞いた時に、そんなに冷たい人じゃないんだなって思いました。観た方の視点からだと、自分には見えなかったものがあって、そんな見方もあったんだって気付かされました。そういう意味ではこよみがよく「世界」という言葉を使って、「私の世界とあなたの世界は違うから。」って言うのが、私は結構冷たいと思ってたんです。「一緒じゃん!」って(笑)。でもその違いを大切にしていたのかと感じて、こよみは芯が強くて大人だなと思いました。
作品に入るまでは正直考えていなかったんですけど、こうして試写や公開が控えた今、この作品が凄く大切で愛おしく自分の中でどんどん深まっていっていると言う過程を含めて、「映画っていいな」って思っていて。そういった経験をまた作品を通して感じたいなと思いましたし、「またやりたいな」って、今になってやっと実感してきたという感じです。
記憶喪失の映画とかって沢山あると思うんですけど、事故をしてしまってという動きはあるんですが、この作品は静かな日々の中で思い合ってる様子が描かれていると思うんですよね。自分が記憶を無くしたりとか、大切な人と過ごした今日が、次の日にはもう忘れられてるとか。なかなか実体験ではないですけど、“思い出”ではなく、“想い”が重なっていくのが人と人との繋がりで1番大事なのではないかなと。今はSNSなどでの“思い出”作りが多いと思うのですが、この作品を通してそういった“想い”の大切さに気付いてもらえたら1番嬉しいなと思います。
衛藤美彩さんが出演する映画『静かな雨』は全国公開中。
公開日/2月7日(金)より
全国順次公開
出演/仲野太賀 衛藤美彩ほか
監督/中川龍太郎
原作/宮下奈都『静かな雨』(文春文庫刊)
https://kiguu-shizukana-ame.com/
©2019「静かな雨」製作委員会 / 宮下奈都・文藝春秋
※インタビュー記事全文は2月14日に発売された雑誌「CATCH&UP 名古屋大事典」にて掲載中
http://mook.web.co.jp/mook/catchandup.php