2021.03.17
日本映画の振興の一環として、特定非営利活動法人映像産業振興機構(略称:VIPO)が文化庁より委託を受け行っている事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。
今年度も、プロのスタッフの指導のもと、オリジナル脚本、35㎜フィルム撮影で短編映画3作品が完成!『毎日爆裂クッキング』の植木咲楽さん、『醒めてまぼろし』の木村緩菜さん、『窓たち』の志萱大輔さんにインタビューさせていただきました。
それぞれの作品は東京、名古屋、大阪の劇場で期間限定上映が行われています。ぜひ劇場でチェックしてみてください。
■期間限定ロードショースケジュール
【東京】
角川シネマ有楽町
2021年2月26日(金)~3月4日(木)
連日19:00~
【名古屋】
ミッドランドスクエア シネマ
3月12日(金)~3月18日(木)
連日19:00~
【大阪】
シネ・リーブル梅田
3月19日(金)~3月25日(木)
連日18:30~
■料金(3本まとめて)
一般1300円、学生・シニア1100円、ほか各種割引あり
「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」について詳しくはこちら
この題材を選んだ経緯、込めた思いとは?
「一番初めに、食べ物を題材としたものにしたいという思いから始まりました。また、現在のコロナの問題に関わらず、空気は冷たいし人間関係は重苦しい、そんな誰もが感じたことのある社会の抑圧や圧迫というものを盛り込んで撮りたいと思い、今回の脚本に至りました。」
テーマを届ける上でこだわった点は?
「弱いものの味方となる作品にしたかったので、頑張っている人たちに対して失礼な点がないか、ということを常に気をつけていました。ある種トラウマになるような映画ももちろんあって、そんな映画も好きなんですけど、今回は誠実でありたいと思い、言葉や表現一つまで気を配りました。」
撮影の技法や見せ方でこだわった点は?
「2つの場所を行き来するという見せ方は以前からやりたかった点でした。今回で言うと、仕事をしている東京の場所と、主人公の取材先。現実世界と、渡辺えりさんが出てくるキッチンスタジオの世界。全く別の場所で思いもよらない出会いを経験する、そんな見せ方の面白さを今後も追及していきたいなと思っています」
キャストの方への演出面ではどのような言葉をかけた?
「主人公・相島文を演じた安田聖愛さんとは、苦しい表情ばかりになる作品ですが最後に向かってお互い頑張っていきましょう、というお話をしました。はじめは暗いシーンが続きますが、希望を与えてくれるある女性との出会いで、はじめて感情を露わにしてラストまで進んでいく、という文の心情の流れを大切にしていただきました。」
出来上がりを見た感想は?
「反省点はというと、今回悪役となった上司・皆月というキャラクターの描き方。30分間の短編の中で描き切るというのが、今の私の力だとまだまだで。文に辛く当たるまでの経緯を描きだせたらよかったなと思いました。」
毎日爆裂クッキング
<食>の情報誌『織る日々』の編集者・相島文は、今日も上司・皆月の執拗なプレッシャーにさらされ、ストレスゲージはMAX状態。ついに味覚障害となり、心はもう爆発寸前。文の脳内は、日に日に荒れ狂ってゆく!
【監督・脚本】
植木咲楽
【出演】
安田聖愛 肘井ミカ 駒木根隆介 今里真 小日向星一 大谷亮介 渡辺えり
この題材を選んだ理由、込めた思いとは?
「もともと1~2時間ものの映画を作ろうと思って書いたものを、この企画用に30分に構成し直したのが今回の脚本です。大事な人が離れてしまったり、大事な場所がなくなってしまうという実体験から、そうゆう“失われていくもの”に対してどのように共存していけばよいのか、どのように生きていったらよいのか、ということを考えながら台本を書きました。」
テーマを届ける上でこだわった点は?
「行き場のない喪失感を表現するためにこだわって撮ったのが、ボートの上で二人が漂流しているシーンと、教室が海に沈んでしまうシーン。教室にあるものだけでなく、おばあちゃんの家にあったものや神社の鳥居など、大事なものすべてが沈んでしまったということを表現する教室のシーンは特に大事に撮ろうと思い撮影に挑みました。」
撮影の技法や見せ方でこだわった点は?
「その時間でしか映しきれない情景というのを大事にしたいと思い、劇中で流れている時間通りの時刻に撮影をすることにこだわっていました。早朝は早朝、夕方は夕方に。難しかったのが電車のシーンで、狙いの時間に狙いの場所で、というのに苦労しましたが、こだわっただけの絵があがってきたのかなと思います。」
キャストの方への演出面ではどのような言葉をかけた?
「本番のテイクをあまり重ねたくなかったので、俳優部とは事前に、劇中のキャラクターの心情についてしっかり言語化しながら話し合いを重ねました。あとは本人がいけるタイミングで、一発でいいもの撮ろう、と演出をしていたような気がします。」
出来上がりを見た感想は?
「説明が足りなくてよく分からない、と言う方もいるかと思いますが、説明に重きを置かず、感じてもらうということを大事にしながら製作できたと思います。見る人が見る時の感情によって、捉え方が変わってくる作品になったと思うので、自分の心の思うままに感じてもらいたいなと思っています。」
醒めてまぼろし
2009年、冬。清水あき子は自宅から自分の学力で通える最大限に遠い都内の高校に通っている。常に睡眠不足のあき子は家では眠ることができず、昔一緒に住んでいたおばあちゃんの家に行き、眠りにつく。相変わらず寝不足の電車内、あき子は吉田と出会う。
【監督・脚本】
木村緩菜
【出演】
小野花梨 青木柚 遠山景織子 仁科貴 青柳尊哉 尾崎桃子
この題材を選んだ理由、込めた思いとは?
「夫婦でなければ、恋人の初期段階のような楽し気な雰囲気もない。夫婦と恋人の挟間に落ちてしまったかのような男女を描きたいなと思いました。ポスターのキャッチコピーでも“めんどくさいね”という言葉が書いてあるんですけど、ただ他人との同居がめんどくさいということだけではなく、めんどくさいことをめんどくさいと言える喜び、に注目してこの作品を作りました。」
テーマを届ける上でこだわった点、こだわったシーンは?
「“等身大であること”というのは常に考えていた気がします。こだわったシーンはラストのシーン。青と赤の点滅のシーンは紆余曲折あり後から付け加えたんですけど、何も問題は解決していないけれど、二人の目が合う、ということがどれだけ大事なことか、というのを表現したくて大事に撮影しました。」
撮影の技法や見せ方でこだわった点は?
「物語の心情とリンクさせながら、ムードある坂道をのぼったり降りたりするなど、心情とアクションを考えながらロケ地を選んだのがこだわりです。あとは主人公の朝子が一人お風呂に入っているシーン。涙は見せてないけれど、お風呂の水滴が涙にも見え、吐露できない内に秘めた心情を表現できたらなと考えながら撮影しました。」
キャスティングの決め手は?
「キャスティングは、主人公を演じた小林涼子さんは決まっていまして、そこを軸にほかのキャストを固めていきました。森役を演じた関口アナンさんは、オーディションの時に“最近オーラを見てもらったら緑でした”とか、よくわかんないことを言っていて(笑)。その羽が生えているかのような、いい意味の軽さがある方が森役によいのではと思い選びました。台本はすでに書いてあったのですが、役者さんにも読んでいただき、お互いのプライベートな話も参考にして取り入れながら物語を構築していきました。そうしたやり取りがリアリティに繋がっているのではないかと思います。」
窓たち
美容室で働く朝子とその恋人でピザ屋のアルバイト、森。一緒に暮らして5年程が経つ彼らの関係は冷め切ったわけでもなく、キラキラしているわけでもなくー。そんな彼らの日常を切り取った、どうしようもないある日のお話。
【監督・脚本】
志萱大輔
【出演】
小林涼子 関口アナン 瀬戸さおり 小林竜樹 里々佳
2021.03.17