2019.06.09
2018年7月に永眠した、劇団四季・創立者の一人で演出家の浅利慶太氏を偲び、6/12から名古屋での上演が始まった「浅利康太追悼公演」ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』。
イエス=キリストが十字架にかけられるまでの最後の七日間を、ロックミュージックで綴った本作。従来の神格化された像を覆し、一人の人間として苦悩するキリストを赤裸々に描いた舞台は、1971年ブロードウェイ、1973年劇団四季での初演当時、社会に大きな衝撃を与えたそう。
名古屋での上演に先駆け、主役ジーザス・クライスト役の神永東吾さんに、作品の魅力についてインタビュー。役に対する思い入れや、浅利さんとのエピソード、名古屋での楽しみについても話を聞きました。
ーはじめに、本作の見どころを教えて下さい。
『キャッツ』『オペラ座の怪人』を作曲したアンドリュー・ロイド=ウェバーの音楽と、浅利慶太先生演出のコラボレーションという、それだけでもすごく期待を感じていただける舞台だと思います。この作品は世界で様々な演出で上演されているのですが、劇団四季の浅利演出は特にドラマチック。荒野を再現した傾斜舞台になっていて、それ以外はとてもシンプルなのですが、そんな舞台がアンサンブルの動きや照明により場面が変化していく。そこも見どころです。
ー今回は浅利慶太さんの追悼公演。神永さんは生前浅利さんから直接指導を受けられていた一人でもありますが、思い出や思い入れはありますか?
『ジーザス・クライスト=スーパースター』の初出演の際、当日のリハーサルで、大ナンバー「ゲッセマネの園」を3回くらい繰り返し歌いました。とてもキツかったのですが、先生が毎回曲が終わるごとに裸足で舞台にあがってきて、一言一言アドバイスをくれるんです。舞台にまであがってきてくださる優しさや、演出に対する情熱をすごく感じて、とても記憶に残っています。だからいつもこのナンバーを歌う前や、歌いながらも、今どうやって聞いていらっしゃるかなとか、ちょっとでも褒めてもらえたら嬉しいな、と考えてしまいますね。
ーキリストの物語を描くのが“ロックミュージック”ということに、とても意外性を感じました。
アンドリュー・ロイド=ウェバーが20代で作曲した音楽なのですが、歴史的事実を“ロック”という激しいジャンルで表現、というのはとても興味深いですよね。激しい音楽と、それとともにテンポよく変化していく舞台が相まり、より衝撃的で感動することができる作品ができあがっているのだと思います。最後は燃え尽きたようにすっきりとした気持ちで帰っていただけるんじゃないかな。
ー神永さんは2012年より『ジーザス・クライスト=スーパースター』のジーザス・クライスト役をたびたび演じています。今回の公演で、今までと異なる点はありますか?
何度演じても毎回新たな課題がありますが、年を重ねたからか以前よりも演じやすくなりました。ジーザスは群衆の中心で話を聞き、人々の心を理解しなければいけない立場にあります。前は離れたところでイメージを探したり、こうしなければいけないという迷いもあったのですが、最近は実際のイエスキリストの年齢にも近くなり、自分らしく演じてもいいんじゃないかなと思っています。
ー今回特に意識された課題は何ですか?
今回は、浅利慶太追悼公演なので、ジーザス・クライスト役でデビューした時に浅利先生から言われたことや課題となっていたことが、ちゃんと解決できているのか、というのを自身に問いかけることが課題でした。先生の思いをイメージし蘇らせて、改めて先生の演出をより大切に届けたいな、と思っています。東京公演では客席の一番後ろに先生の写真を飾って公演を行いました。もちろん舞台から写真は見えないんですけど、見守ってくださっている感じがしました。
ー劇団四季ミュージカルの原点とも言われる『ジーザス・クライスト=スーパースター』。その主役を演じる上でプレッシャーを感じることはありますか?
最初は、夢じゃないのかなという思いでした。それがだんだんリアルになって不安やプレッシャーを感じていましたね。浅利先生は最後までどの作品に対してもパッションをもって指導・演出されてきたと思うんですが、特にこの作品は才能ある人たちが情熱を注ぎ創り上げ、40年以上長く愛されてきた作品です。劇団の俳優たちの中でも「この作品に出たい」とみんなが思っているんです。その中でもジーザス役を演じることができるのは、感謝としか言えませんね。
ー東京公演を見られた方からは「表情の表現がすごい」という感想が多いようです。
特に表情に対する指導があった訳ではありませんが、ジーザスの求める神への道、信念を果たす道の誰にも理解できない孤独感や次元の違いが表情から伝わっているのかな、と思うと嬉しいですね。
ーまた、2階席から観覧すると”目が合う”、という声も。
芝居的に周りを眺めるといった演技が多いので、そう思われる方がいるのかもしれないですね(笑)それに傾斜の舞台は一番上に立つと2階席と同じくらいの高さになるので余計に(笑)
ー名古屋での公演もいよいよスタート。楽しみにしていることはありますか?
やっぱり名古屋なので美味しいモノを食べたいなと思っています。僕、風来坊の手羽先が大好きで。名古屋に来るといつも行っています。今回も行くつもりです(笑)
ーそれでは最後に名古屋の皆さんに向けて、メッセージをお願いします!
この作品は、最初から最後まで緊張感があって、正直にいうと観ていてもとてもストレス発散になるんです。また、事実に基づいたキリストの興味深い話ばかりで、軽い気持ちで観られる作品ではないんですけど、その分熱いパッションを感じられる。また、個人的に苦しい場面ではあるのですが、最後には女性に嬉しい肉体美もお見せできるので(笑)ぜひ、3回4回と観に来ていただけると嬉しいです。
『ジーザス・クライスト=スーパースター』エルサレム・バージョンを名古屋の専用劇場で上演するのは、なんと18年ぶり。今なら6月中の公演のチケットも間に合うとか。人間の内側の葛藤を描く熱い舞台、ぜひ皆さま足をお運びください!
劇団四季 ミュージカル
『ジーザス・クライスト=スーパースター』
【期間】6/12(水)~7/7(日)
【会場】名古屋四季劇場
【料金】S席10,800円、A席8,640円、B席6,480円、C席3,240円
名古屋四季劇場
2019.06.09