又吉直樹2作目の小説「劇場」を山﨑賢人&松岡茉優で映画化!行定勲監督にインタビュー!!

夢を叶えることが、君を幸せにすることだと…
映画「劇場」伏見ミリオン座で公開中!!

©2020「劇場」製作委員会

「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹の2作目となる恋愛小説の映画化。

 

主演は、興行収入57億円を突破した「キングダム」の大ヒットで、いま最も輝く俳優のひとり山﨑賢人。ヒロインは「万引き家族」で世界に認められた若き実力派・松岡茉優。

 

恋をした、夢を追いかけた全ての人へ贈りたい映画「劇場」。切なく心震わせる、誰もが胸に秘める忘れられない気持ちをぜひ劇場で!

 

今回は「GO」や「世界の中心で、愛をさけぶ」など日本映画界に新しい風を送り続ける監督・行定勲さんにお話を聞いてきました。

 

行定勲監督インタビュー

「山﨑の大胆な演技を繊細な松岡が引き出す…二人じゃないとできなかった映画です」

 

―まずは原作に惹かれた理由から。

夢がある人間は、その夢に辿り着こうとするアイデンティティが、ひとつの壁を作ります。この壁をあきらめれば、彼女を幸せにできたかもしれないが、心の奥底できっと後悔が残るだろうし、彼女もそんなことは望まない。というわけで夢と向き合っていくわけですが、それはもちろん簡単なことではありません。

 

すると、自分のことを一番理解してくれる人にあたってしまう。一番愛している、大切にしている、その人こそ自分を一番理解している、受け止めてくれる、自分のことをわかってくれると思うからこその甘えが生まれてしまう。人間は強くないですから。又吉先生の小説「劇場」では、そこが見事に描かれています。

 

―映画化の際に大切にしたことは?
小説を映画化するとき、映画ではないとできない表現を必ず入れること。小説のコピペにならないようにどうすれば良いか常に考えています。

 

ドラマチックな展開があるわけではなく、息吸ってめし食ってただ寝るだけという日常の話です。エロチックでもなく、男女関係にセックスも描かれていない。日常の葛藤や自我という見えない敵と戦っている映画です。

 

例えばロミオとジュリエットだったらわかりやすい。家柄の問題です。二人が愛し合っていても家柄が許さない。フジテレビ系のドラマ「昼顔」だと相手が結婚しています。不倫です。禁断の恋で、これもわかりやすい。

 

このように普通のラブストーリーでは、乗り越えないといけないものを二人以外のところで用意します。だけど、この映画にはそれがありませんから。

 

-キャスティングについて。
小説は誰の顔も思い浮かべずに読んだんですけど、この役はかなり純度が高くないとできないと感じました。魂で芝居をしないと、その本質は決して出てこないだろうと。

 

誰が演じたら良いかというと、このような心象風景を描く芝居をやったことのない人で観たい。山﨑賢人のような2枚目がダメな男を演じるとリアリティがあり、よりダメな感じが伝わるのではないか。所々で見せる媚びた顔には可愛らしさもあり、それがまた憎たらしいという(笑)。山﨑は、ダメな人間の役をほとんどやっていないと思いますが、今回の永田はハマり役でしたね。

 

-松岡茉優さんはいかがですか?
山﨑はとにかく大胆で、松岡茉優は役をコントロールする繊細なタイプ。役の振り幅もすごくて、台本をしっかりと読み込んた演技を披露するんですが、それを見た山﨑がまさに衝動で、一回しかできないような芝居をやってのけるという。この二人じゃなければ、この映画は実現できなかったと思います。

 

-印象に残っているシーンは?
最初に面白いと思ったのは、松岡のクランクイン日に撮った喫茶店のシーン。メニューを見て永田がアイスコーヒーを2つオーダーしたら「勝手に決めちゃった」と沙希が爆笑するんですけど、そのときに永田の目がすごく泳いで…羞恥心なのかプライドなのか、何かわからない永田の挙動不審さに「劇場」の主人公らしさはこれだと痛烈に感じました。このシーンだけで、良い映画になると確信しました。

 

その時点で松岡にはお姉さんのような母性があり、永田には何者かわからない不審さがあって、二人の関係性がすごく見えたんですよね。「賢人に良かったよ」と話すと「どんな感じでした?」と本人は無自覚でしたが(笑)。

 

もちろん無自覚で、自分の思ったことをカメラの前で演じてくれれば良くて、そいう意味で山﨑は自由に演じて、逆に松岡が山﨑の表情を引き出している、そういう関係性がすごくおもしろかったですね。

 

-二人の世界感を出すために心がけたこと。
二人の間合いなど、そこで起こったことが全てで、そのときの表情や美しさを撮り逃さないことだけ心がけました。とにかく、ずっとカメラを回し続けているから、テンポの良いところはカットが割れていないことに気づくと思います。

 

-最後にメッセージを。
誰にでも起こる恋愛劇です。この映画を観て泣いた人がたくさんいます。誰かが死んだからとか、傷付いたからとかではなく、二人の想いに泣いている。決して感情移入が必要なわけでもなく客観的に見て、どうしようもない二人ではあるけれど、だからこそ愛の形が明確にあって、そこに心が奪われているとすれば、すごく素敵なことだと思います。

STORY

高校からの友人と立ち上げた劇団で脚本家兼演出家を担う永田(山﨑)。前衛的な作風は上演ごとに酷評され、客足も伸びず、劇団員も永田を見放してしまう。

 

解散状態の劇団という現実と、演劇に対する理想のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独を感じていた。そんなある日、永田は自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡)を見かけて、自分でも驚くほどの積極性で声をかける。

 

突然の出来事に沙希は戸惑うが、様子がおかしい永田は放っておくことができず、一緒に喫茶店へ。女優になる夢を抱き上京し、服飾の学校に通う学生・沙希との恋はこうして始まった。

 

お金のない永田は沙希の部屋に転がり込む。沙希は自分の夢を重ねるように永田を応援し、永田も自分を理解し支えてくれる沙希を大切に思いながら、理想と現実の間を埋めるようにますます演劇にのめりこんでいく。

 

映画『劇場』

【出演】
山﨑賢人 松岡茉優 寛一郎 伊藤沙莉 井口理(King Gnu) 三浦誠己 浅香航大

 

【監督】
行定勲

 

【原作】
又吉直樹「劇場」(新潮文庫)

角屋昌也
NAGOYA.ライター
角屋昌也
東海エリアの女性情報誌・月刊Cheek 35年の歴史の中でも超貴重な男性編集部員。休日はフリーライターの妻とマルシェへ行ったり、カフェでのんびり過ごしたり。インスタは愛犬のモナカ(フレンチブルドッグ・玉無)一色。

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