ニコニコ動画の❝希代の歌い手❞として絶大なる支持を集めるアーティスト・伊東歌詞太郎。今やシンガーソングライターとしてオリジナル楽曲の制作や、小説・エッセイ本の執筆、楽曲プロデュースや声優業、DJ・パーソナリティなど、その活躍の幅は限りを知らない。
最近ではビクターエンタテインメントより再メジャーデビュー。2022年2月に初のベストアルバムとなる『三千世界』をリリース。書き下ろし新曲「夢幻行路」がスマートフォン向け本格RPGゲーム「オリエント・アルカディア」のタイアップ・ソングにも決定しています。
今回ナゴヤドットに初登場していただけるとのことで、アルバム『三千世界』のことから、音楽をどのように捉え制作活動に励んでいるのか、原点から現在に至るまでお話を伺いました。
まずは初のベストアルバム『三千世界』について、改めて紹介をしてもらった。
「伊東歌詞太郎の活動を長く続けてきて、動画でしか聴けない楽曲、舞台に提供した楽曲など、いろんなところにあって聴きにくくなってしまった楽曲を集約し、もっと伊東歌詞太郎の楽曲にアクセスしやすくなったらいいなというのが、このベストアルバム制作の1つの経緯となります。
アルバムのタイトルは、仏教用語から取らせていただきました。「三千世界」とは、この世にあるありとあらゆる世界、という意味。過去、1枚目のアルバムで「一意専心」、2枚目で「二律背反」というアルバムを出しており、次出すなら「三千世界」とずっと決めていたんです。結果的にベストアルバムでこのタイトルを付けることができ、本来の意味とリンクする作品となりました。」
DISC2枚組で全31曲が収録される『三千世界』。数多くある楽曲のなかからの選曲が、今作の制作の中での一番の苦労だったと語る。
「これまでのすべての楽曲を愛しているので、今回は泣く泣くの選曲となりました。楽曲に対しての思い入れは全曲に等しくあり、順位や優劣をつけるということはできません。またそれはカバー、オリジナル問わずです。僕にとってはどちらも大切な歌。歌を奏でることに、カバーであること、オリジナルであることは関係ないんです。」
話を聞けば聞くほど、彼からあふれ出しているのは音楽への強い愛。そこで気になるのが、そこまで愛することとなった「歌」との出会い。
「僕は自分でもそのきっかけが何なのかわからないのですが、幼少期から「歌を歌って生きていく」と根拠もなくずっと思っていたんです。ニコニコ動画への動画の投稿というのは、そんな僕の人生の一つの通過点。幼少期から歌い手となり現在に至るまで、僕の音楽に対する思いは何ら変化していないんです。今となっては、他のことに目を向けず、根拠もなくこの道を信じ続けた自分の頭の悪さに感謝をしています(笑)
これまで音楽にたくさん救われてきて、自分も音楽の力で誰かを救うことができたらいいな、と心の片隅では思っていたのですが、果たしてほんとにそうなのだろうか、とどうしても腑に落ちなくて口に出すことができなかった。ある時その理由がやっとわかったのですが、僕は人に届けたり救うために音楽をやっているのではなくて、ただ音楽が好きで楽しくてやってる。まず自分が音楽をやれているだけで最高に幸せなんです。その上で、出来上がった音楽を聴いてくれた方々が自分なりに価値を付けてくれて、「元気が出ました」と言ってくれて、僕は生活できている。それはもう望んではいけないような、あり得ないほど幸せなことで、めちゃくちゃ嬉しいです。」
アルバムの初回限定盤などにも書き下ろし短編小説「家庭教室」が封入されるが、そのほかにも声優業やDJ・パーソナリティーなど、活動の幅を広げている彼。そこで気になるのがそのマルチな才能だ。
「僕はアートって結局一つのことだと思っているんです。何かを表現する手段というのが、絵なのか演技なのか、音楽なのか、文学なのか。ただただそれだけの違いなんですよね。それが執筆や演技の経験を経てよくわかりました。
どれも一つに繋がっているのでおのずと影響し合っていて、例えば音楽で多くのことを得たとすると、少なからず執筆にも何かしら得るものがあって、その積み重ねなんだと思っています。
ただ、絵を描くことだけはどうしても苦手で。アートを生み出すどころか、無駄なデータしか生み出すことができない(笑)。結局は基準が愛で、絵を描くことよりも、音楽や文章を書くことの方を愛しているからしょうがないですね(笑)。
あ、でも絵を見ることは好きなんですよ。絵を通して表現することはできませんが、絵を鑑賞して得る感度というのはこのアーティスト活動を通して高まってきているのを感じます。こう見えて美術館とかも行くんです(笑)。」
好きになるととことん調べ、ルーツを辿り、現地に赴き、触れられるものなら触る。そうして彼はあらゆるモノに対する愛からインスピレーションを得る。楽曲制作においてはもちろん音楽からの影響が大きいが、それと同等に文学からも大きな影響を得ていると語る。
「僕は本が大好きで、読み過ぎなくらい読んでるんです。小説や純文学、随筆やエッセイ…。実用書系以外の活字は手あたり次第に読んでいます。何度も読み返している大好きな本もあるのですが、それも数えきれないほど(笑)。いろんなジャンルで自分にとってのナンバー1があります。」
ジャンルを言ってくだされば、と言うので、「洋書」の中でお気に入りな一冊を伺ってみた。
「洋書の中で一番好きなのは、J.D.サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』ですね。主人公はホールデン・コールフィールドという17歳の少年。自分が17歳から18歳になるまでに絶対に読んだ方がいいよ、と当時通っていた塾の先生にオススメしてもらったのがきっかけでした。淡々と主人公の一人語りが繰り広げられているもので、面白いというのではないんですけど(笑)。その主人公が相当イタいやつで。
でも当時、バンドを組んだり劇団に通っていたり、親から勘当されて一人暮らしをしていたことも影響して、どこか学校の友達たちとのギャップを感じていた自分にとっては、とても刺さるものがあったんですよね。「なんだ、みんな自分のことを特別だと思っているんだ」とか、学べることがたくさんあり、何度も読んでしまいましたね。」
本のほかにも、今日名古屋に来たことだとか、こうしてインタビューを受けていること、ふと見たメールやニュースなど、すべての事柄が制作活動に影響していると語る彼。「人」からの影響で印象的なものがあるかと聞いてみると、、
「表層的な話では、僕ライブ中に絶対に水を飲まないんです。そうなったきっかけというのが、ポールマッカートニーが来日した時、「ポールが2時間半、水も飲まずにライブをやりきった」と話題になっていたんですよね。ポールも「水を飲むのはエンターテインメントなのかい?」と言っていて。僕はそれを見て、70代のポールにできて、自分にできないことはないと思ったんです。それからライブ中に水を飲むことは一切なくなりました(笑)。」
2021年7月、ビクターエンタテインメント/コネクストーンレーベルから再メジャーデビューを迎えた伊東歌詞太郎。メジャーという立ち位置で、今後どんなことを追求していくのか期待が膨らむ。
「メジャーということを否定的に捉えられる同業者の方もいるんですけど、僕の中ではずっと憧れなんです。たくさんの人が関わってくださって、僕の音楽を一緒になって広めてくれる。すなわち音楽が広まるスピードというのが格段にあがるんですよね。なのでこの機会をとても嬉しく思っています。
夢とかやりたいことというのはグラデーションのようにたくさんあるのですが、本質なことを言うと、もっといい音楽が届けられる身体を手に入れたり、センスを磨いたり、機材周りをそろえていくなど、これからも努力をしていきたい。メジャーとなりたくさんの方々の力が加わりますが、インディーズ時代と変わらぬ努力を土台に、夢を叶えていきたいなと思っています。」
最後に名古屋の印象と名古屋の皆さんへのメッセージを伺った。
「名古屋はね、僕にとって近所なんですよ!僕は味の濃いものが大好きだから、「なごやめし」との相性が抜群。午前11時に仕事が終わって、お昼ご飯を食べたいなと思ったら、車借りて名古屋の山本屋へ味噌煮込みうどんを食べに行ったりするんです。
東京にも、何なら家の近くにも味噌煮込みうどんのお店はあるんですけど、あの赤い八丁味噌と、深い出汁の味わいというのが唯一無二で、わざわざ食べに行きたくなるんですよね。そのくらい僕にとっては名古屋が身近なものとなっているんです。
47都道府県ライブを行っているので、全都道府県最低4回以上は訪れたことがあるのですが、中でも一番多く訪れているのが愛知県だと思います。それぐらいたくさん呼んでいただいていて、とても感謝しています。なのでこれからも名古屋で伊東歌詞太郎のライブを見たいと思ってくれる人が増えるように、一生懸命頑張りたいと思っています!ぜひよろしくお願いします。」
ベスト・アルバム『三千世界』に収録される、伊東歌詞太郎の新曲「絆傷(キズナキズ)」は、TBS系プロ野球中継 “S☆1 BASEBALL”のテーマソングに決定。
またアルバムと同日、”音楽”にフォーカスを当てた書籍「伊東歌詞太郎 ミュージック・クロニクル 一唱懸命」を発売している。
またアルバムを引っ提げ、ワンマンLIVEツアーが開催されることも決定している。5月3日の愛知・名古屋ダイアモンドホールを皮切りに、全15会場を巡るそう。チケット情報などの詳細は追ってアナウンスされるので、情報をお見逃しなく!
プロフィール
インターネット動画投稿サイトにカバー楽曲を投稿し、活動を開始。2014年にアルバム『一意専心』でメジャーデビュー。アジア圏を中心とした海外でも人気が高く、自身の活動と並行して他アーティストへの楽曲提供やプロデュースワークも行なっている。また、2018年には初の小説『家庭教室』、2020年には初のエッセイ『僕たちに似合う世界』を上梓。作家活動に加えてアニソンの歌唱、ラジオ/ネット番組のパーソナリティーから声優業までマルチな才能を展開。2021年7月、ビクターエンタテインメント・コネクストーンから再メジャーデビュー。メディアでの顔出しはしておらず、狐のお面がトレードマーク。
リリース
BRAT ALBUM『三千世界』
伊東歌詞太郎これまでの活動を象徴する初のベストアルバムがリリース。原点ともいえる❝歌ってみた❞曲の「チルドレンレコード」や「約束のスターリーナイト」。オリジナル作品の「さよならだけが人生だ」「百花繚乱」など選りすぐりの曲を収録。
【初回限定盤】(2CD+DVD)
VIZL-1997/5,940円(税込)
※12月4日”Auroragazer”ツアー豊洲PIT公演LIVE PHOTOBOOK(32P予定)、「家庭教室」書き下ろし短編小説付属
【通常盤】(2CD)
VICL-65647~8/3,850円(税込)
[CD DISC 1]
1. ピエロ
2. 惑星ループ
3. 小夜子
4. しわ
5. 神のまにまに
6. Role Praying
7. ミルクとコーヒー
8. 帝国少女
9. 約束のスターリーナイト
10. アストロ
11. チルドレンレコード
12. 脳漿炸裂ガール
13. 帰ろうよ、マイホームタウン~追想~
14. 僕だけのロックスター
15. パラボラ~ガリレオの夢~
[CD DISC 2]
1. 北極星
2. キリトリセン
3. タイムトラベラー
4. 少年と魔法のロボット
5. 恋愛裁判
6. 少女レイ
7. Heeler
8. さよならだけが人生だ
9. Fairytale,
10. タイムマシン
11. ムーンウォーカー
12. 真夏のダイヤモンド
13. 百火繚乱
14. I Can Stop Fall in Love
15. magic music
16. 絆傷(キズナキズ)
ツアー情報
“伊東歌詞太郎 ワンマンLIVEツアー2022 「三千世界」”
5月3日(火・祝)愛知 名古屋ダイアモンドホール
5月6日(金)Zepp Haneda(TOKYO)
5月14日(土)大阪 なんばhatch
5月21日(土)静岡 LIVE ROXY SHIZUOKA
6月4日(土)石川 金沢AZ
6月5日(日)新潟 新潟LOTS
6月11日(土)HIROSHIMA CLUB QUATTRO
6月12日(日)福岡 DRUM LOGOS
6月18日(土)香川 高松DIME
6月19日(日)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
6月25日(土)北海道 札幌 PENNY LANE24
7月3日(日)NAGANO CLUB JUNK BOX
7月9日(土)群馬 高崎clubFLEEZ
7月16日(土)岩手 盛岡 CLUB CHANGE WAVE
7月17日(日)宮城 仙台Rensa