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インタビュー|名古屋の商社が提案、廃棄予定食材を再活用したサステナブルなモノづくり

 

2023年12月25日(月)まで、名駅直結の『KITTE名古屋』で行われていたクリスマスイルミネーションは皆さんご覧になりましたか?

 

こちらに採用されている、美しい色彩の布は、創業天保12年の名古屋の老舗商社の豊島株式会社が手がけるブランド「FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)」のもの。廃棄予定食材を染料として再活用する”アップサイクル”を取り入れたプロジェクトで、残渣(廃棄予定食材)を提供する食品関連企業や、その生地で商品を展開するコラボレーション企業とで成り立つブランドです。

 

『KITTE名古屋』で開催中のギャラリー

 

イルミネーション開催期間中は、『KITTE名古屋』2階貫通道路に位置するギャラリーにて「FOOD TEXTILEギャラリー」も開催。ブランドの特徴を知れたり、幅広く展開する商品を実際に手に取り見ることもできました。

 

そして今回は、担当者である豊島株式会社 名古屋営業企画室・都築里帆さんを訪ね、ブランドの成り立ちから、今後の展望まで、お話を伺ってきました。

 

名古屋の商社・豊島株式会社が取り組む「FOOD TEXTILE」プロジェクト。これまでとこれからをインタビュー。

豊島株式会社 名古屋営業企画室・都築里帆さん。本日はレタスの残渣で染色された「FOOD TEXTILE」のトップスを着用していました。

 

都築さん:

プロジェクトのはじまりは9年前。当時のプロジェクトリーダーが、異業種交流会にて、大手食品メーカーさんの「カット野菜の切れ端など大量の廃棄食材の処理に困っている」という悩みを伺ったのがきっかけでした。

 

食品廃棄量は日本でも年間約632万トン。弊社は商社のため国内外に様々なネットワークがあるのですが、そのネットワークの一つに、植物や食品から染料を作り、洗濯しても色落ちがしないクオリティーで染色する技術を持つ日本の会社がありました。同社と協業していくことで食品メーカーさんが抱える問題に対して何か力になれるのではないかと思い、パートナー契約を結んだ後、このプロジェクトがスタートしていきました。

 

ー 纏うことを大切に、、、そうして紡がれる「FOOD TEXTILE」ってどんなブランド?

昔から日本には、「草木染め」という天然染料で衣類を染める技法がありました。当時は赤ちゃんのおくるみなどに使われ、赤ちゃんが口にしてもよいハーブなどで染められていたという話もあります。

 

私たちはそんな「草木染め」の技法に、少量の化学染料を加えることで、洗濯洗いをしても色落ちのしない、長く愛用できるアイテムを製造しています。100%天然ではありませんが、赤ちゃんが安心して使っていたおくるみのように、着た時にちょっといい気分になるもの、纏ったときに安心感を与えるようなモノづくりを心がけています。

 

 

食品1種類につき、ph値を調整することで10色ほどのカラーを採取することが可能で、現在は当社で50食品500色の染料を保有しています。生地や糸、綿、アパレル製品など、お客様の要望に合わせた形で納品が可能で、企業さまはもちろん、一般のお客様でも購入することが可能です。

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抹茶は緑、レタスは黄緑、桜はピンク、といった食材を連想できるようなカラーが多い。

 

異例なのが、赤かぶを使ったブルーのテキスタイル。食材でブルーのカラーが採取できるのはとても稀だそう。

 

どのカラーもほっこりする、あたたかみのある風合いを感じます。

 

ー 特徴の一つが「トレーサビリティー」。

食品関連企業の皆さんとのやりとりをさせていただく中で知ったのが、ファッション業界とは異なる厳しい基準があるということ。基本的に食品は、「その食品がいつどこでだれによって作られたのか」という情報を追跡できるトレーサビリティが徹底されているのですが、ファッション業界では最後の縫製作業が行われた場所しか記載されず、綿から糸、布、そして洋服といった工程のトレースを追うことはできません。

 

そこで、「FOOD TEXTILE」では、より安心してお客様に手に取っていただけるようにと、トレーサビリティシステムを導入。ファッションにおける川上から川下までをカバーする、繊維のプロならではの自社の強みを生かすことができました。

 

商品タグに記載されているQRコードを読み取ると、商品1着あたりに、どの食品の残渣がどれだけ使われているかなどを知ることができる。

 

また、公式サイトでは一部生産者さんの背景や想いも取材し公開をしています。そういった生産者さんの顔を知っていただくことで、より愛着をもって商品を使っていただけたら嬉しく思います。

 

ー大きな転機はコンバースとのコラボレーション

このプロジェクトを皆さんに広く知っていただいたきっかけの一つは、コンバースさんとのコラボレーションだと思います。2019年にコンバースさんより発表された、環境に配慮した新シリーズ「converse e.c.lab(コンバース イーシーラボ)」に、私たちの「FOOD TEXTILE」を採用していただいたのです。

 

「converse e.c.lab(コンバース イーシーラボ)」の商品 ※参考商品(製造終了した商品となります)

 

コンバースさんは、その後も3回ほどリピートして「FOOD TEXTILE」の生地を採用いただきました。

>>「コンバース」とのコラボレーションについて

 

「FOOD TEXTILE」では、通常の染色と異なり、食品(残渣)の仕入れを行うことからモノづくりがはじまります。食材の状態によっては、理想通りの色彩が叶わない可能性もあるので、入念なチェックも必要です。そして全行程を国内生産にこだわっておりますので、トータルで見ても、通常の3倍ほどの労力や時間を要します。

 

にも関わらず、コラボさせていただいたブランドさんの中には、リピートしていただくブランドさんも多く、「FOOD TEXTILE」の取り組みに賛同し、ファンとなり、寄り添ってくれる方々がとても多い印象を受けています。納期やコストなどもご理解いただいて、むしろそこに価値を見出していただいています。

 

「色がキレイだね」「店頭が華やかになったよ」といったお声や、各商品についている使われた残渣のタグを見て「これを見ることで、私たちも環境問題や食品ロスを考えるきっかけになりあした」と言っていただいたお店さんもあります。

 

各商品のタグを見ると、なんの残渣が使われているのかが一目でわかる。

 

これまでで印象的だったコラボレーションでいうと、自社で出た残渣を、自社で活用いただいた案件が思い浮かびます。

 

「ブルーボトルコーヒー」さんでは、お店で出るコーヒーの抽出殻の残渣を使用して、日常使いができるトートバッグを製造。カフェやオンラインストアで販売いただきました。

>>「ブルーボトルコーヒー」とのコラボレーションについて

 

また、名古屋タカシマヤ ゲートタワーモールなどにも店舗を構える、ハーブとアロマセラピーのお店「生活の木」さんでは、ハーブティーの自社製造の段階でどうしても出てしまう、厳しい基準を満たせなかったハーブ素材(残渣)を使用して、直営店スタッフのユニフォームを製造させていただきました。

>>「生活の木」とのコラボレーションについて

>>そのほかのコラボレーション事例はこちら

 

ー小ロットの受注や海外進出…あらゆる日常のシーンに「FOOD TEXTILE」を

現在日本の食品廃棄量は、大手食品関連企業の取り組みなどにより、年々減少傾向にあります。この食品廃棄量がゼロとなり、「FOOD TEXTILE」の取り組みを畳むことが、私たちの最終的な目標です。ですがそれを叶えるためにも、やるべき課題が山積みとなっているのが現状です。

 

弊社はこの数年で、繊維を専門に扱う商社からライフスタイル提案型の商社へシフトしており、その中で、生活のあらゆるシーンで「FOOD TEXTILE」を利用いただく機会を創造していきたいと思っています。

 

そのための一つの手段として、弊社で今まで苦手としていた、小ロットの受注にも対応できるようになりたいと考えています。

 

近年新しく立ち上げたプロジェクトで「BUZZU(バズユー)」というプロジェクトがあります。

>>「BUZZU」公式サイト

愛犬や子ども、自身のためにモノづくりを趣味とする一般のお客様や、個人でお店を経営されているお客様、団体などのモノづくりの手助けを行うプロジェクトで、1枚からユニフォームづくりなどが可能となっています。

 

「FOOD TEXTILE」の生地を使用したTシャツもラインナップにありますので、サステナブルなモノづくりに興味があるすべてのお客様の要望に答えられるのではないかと思います。「FOOD TEXTILE」以外にも、サステナブル素材を使用したアイテムを多数選べるようになっています。

 

そして海外展開。ごくまれに単発で発注いただくこともあるのですが、継続的にご利用いただいている例はまだないので、今後もPRしていきたいと思っています。海外の皆さんにも「FOOD TEXTILE」のファンになっていただくことが目標です。

 

ー新しい試みだった「KITTE名古屋クリスマスイルミネーション」

 

今回の『KITTE名古屋』さんとのコラボもまさに小ロットでの受注で、「FOOD TEXTILE」としては新しい試みでした。

 

『KITTE名古屋』さんからは、”食”にフォーカスを当てたツリーを打ち出したい、とご依頼いただき、特に愛知県内の残渣を使用したテキスタイルを多く採用しています。

 

合わせて設置させていただいたこのギャラリーでは、「FOOD TEXTILE」のECサイトで取り扱いのある、オリジナル商品やコラボ商品を陳列。残渣を提供いただいている一部パートナー企業さんについてもパネルで紹介させていただきました。

 

 

ー繊維商社が”食”の課題に取り組む理由はどこに、、、?

私たちがこのプロジェクトを続けるのは、「喜んでもらえているから」という理由に尽きると思います。

 

残渣といっても、食品関連企業さんたちが大切に育てた食品に変わりはありません。惜しまれつつ捨てられていたものが、食とはまったく異なるものとして生まれ変わった様を見てもらったとき、ほんとうにとても喜んでくださいました。

 

また、企業さんの横のつながりで、このプロジェクトが広がるにつれて、どんどんと喜ぶ人々が増えていきました。食品関連企業はもちろん、国内製造にこだわっているので国内の縫製工場の皆さん、そして「FOOD TEXTILE」に賛同していただきコラボいただいたブランドの方々、手に取っていただいた消費者の皆様…。

 

プロジェクトが始まった当時はファストファッションが大流行していて、服を大量に生産して廃棄する、という流れが主流でしたが、その流れも現在は変わりつつあります。

 

「FOOD TEXTILE」をきっかけに、もの一つ一つの価値をお客様に理解いただいて購入していただく、そしてその一つの商品を大切に長く纏っていただく。そのようなお買い物の仕方を、届けていけたらと思っております。

 

 

環境やファッションへの哲学が感じられる、サステナブルなアイテムを身に纏うことは、とても心地よいですよね。過去のコラボ事例を見てみると、身近なブランドも多数あり、いつのまにかこの素敵な取り組みが日常にあふれていたのだと感じることができます。まずは知ることから。ぜひ「FOOD TEXTILE」を調べてみてください。

NAGOYA. ライター